ペンを持って紙に向かっている時間は、そうでもない。
しかし、ペンを置き、紙を机にトントントン。封筒に、サッ。 糊を片手にゆっくりと口を濡らしていく。そう、真っ赤なルージュを引くように。 つぐんだ口には印をつける。十字を少し、傾けて。 ここまできて、いつもそうだ。 ここまできて、不安になる。 記し忘れたものはなかろうか、と。 ペンを置く前には数度確認はしてあるはずで、そんなことはないだろうとは思うのだが。 しかし、いつも不安になる。 その不安を少しでも和らげるために、私はいつもキツネの窓口へと足を運ぶ。 いつもの顎鬚のあるキツネがいないと、また不安になる。 彼女が判を押してくれないと、あの子にこの文が届かないんじゃないか、と。 けれど今日もそんな不安は杞憂に終わった。 窓口に立つと、ちょうど顎鬚のキツネ嬢は厠から帰ってきたところ。 「これを、いつものところに頼みます。」 「はい、では油揚げを2枚ですね」 「すみません、今日は油揚げは1枚しか持ち合わせていないんです」 「じゃあ代わりにチューインガムはありますか」 右のポケットをまさぐると、ちょうど2枚ほど。 「これで」 「確かにお受け取りました。明日には先方に届かれますよ」 「ありがとう」 家に帰るまでの道のりは、非常に充足感に満ちている。 けれど、家に着くと、それはまた不安へと切り替わる。 あの子は、文を読んだあの子は、私に返事をよこしてくれるのだろうか。 確かあの子の家の近くには、フンコロガシの窓口があったはずだ。 心配性な私はいつも考えてしまう。そう、自分の送ったアレはいまどこで何をしているの、と。
by arittakewinds
| 2005-09-28 08:59
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